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01「迷える患者」たちへ

我慢は美徳ではない

「痛み」、この厄介な感覚は、極めて身近でしかも古くて新しい問題である。頭痛に腰痛に生理痛、寝違えによる首の痛みなど、痛みを経験したことがないとする人はまずいないだろう。哲学者で偉大な生物学者であったアリストテレスは、この痛みを捉えて、「痛みは魂を強くする」とした。目的因によりすべての生物現象を説いた彼にすれば、痛みも必然の産物に他ならなかった。
わが国では、我慢を美徳とする風潮がまだ根強く残っており、少々の痛みくらいで医者に行くのは憚るとすることが多い。また、医者も「検査では異常がないのだから、気のせいでは・・・」と突き放すことがあると聞く。医学とは痛みとの戦いの歴史であり、痛みの仕組みを理解し、それを克服するための努力の積み重ねであった。しかし、共通の認識を持てる五感とは異なり、痛みは本人しか分からない個人的かつ主観的な感覚であるために、現代の医療にあっても、痛みを病気の症状のひとつに過ぎないとする考えが存在している。
しかし、ある種の痛みは放っておくと大変なことになるのだ。痛みを引き起こしている神経の興奮が、新しい激烈な痛みを生み出すのである。また、痛みを解決できないために、様々な悪い要因重なり合って、より強い痛みを作り出してしまうこともある。痛みがあるのに愉快な気分になれるはずはなく、不安になり、怒り易くなり、他人への気配りを忘れたりもする。痛みはその本人でけでなく、周囲の人達をも憂鬱にしてしまうのだ。従って、「痛みを我慢する」ことは決して美徳ではない。さらには「魂を強くする」ことにもなり得ない。
書店には家庭医学全集をはじめ、健康に関する本が数多く並んでいる。しかし、痛みについて適切な記述が成されている本ばかりとは言えない。痛みを抱えながらも、誤った情報により、何処を受診すれば良いのか分からず、右往左往している方も少なくはないだろう。
私が従事しているペインクリニックは、これら「迷える痛み患者」のための専門外来である。次回からはペインクリニックで扱う疾患を紹介していく。
(森本昌宏=近畿大麻酔科講師、祐斎堂森本クリニック医師)

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