ドクター森本の痛みクリニック

Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

06 頭痛4

龍之介も苦しんだ?「片頭痛」

片頭痛は、生物活性アミンであるセロトニンが脳の血管を収縮させて、その反動で血管が拡張し、血管周囲に炎症を起こすことで発症する。ストレスが加わると、セロトニンが多く放出されるので、ストレスは大敵である。
母親からの遺伝性が強いと考えられており、母親に片頭痛がある場合には娘では約70%、息子では30%が片頭痛を発症する。
典型的な片頭痛は、閃輝暗点(ぎらぎらとした光が見える)などの前兆(aura・・・ギリシャ語でそよ風の意)に引き続いて、ズキズキとする拍動性の痛みが頭の片側(左右が変動することもあり、まれに両側)で数時間持続する。
芥川龍之介の短編『歯車』のなかには「視野のうちに妙なものを見つけだした。半透明の歯車だった。歯車は次第に数を殖やし、半ば僕の視野を塞いでしまう。暫くの後には消え失せる代りに頭痛を感じはじめる」との一節があるが、この歯車こそ閃輝暗点である。また、発作が始まる数時間~二日前にあくび、イライラ、空腹感、体のむくみなどの予兆をみることがある。
睡眠不足よりも寝過ぎの場合に起こりやすいとされているので、寝過ぎはよくない。その他、日常生活で注意することは、アルコールやチーズ、チョコレートの摂取を控えることである。一方、マグネシウムやビタミンB2を多く含む野菜を多く摂って、適量のカフェイン(発作の起こる前にコーヒーを二~三杯)を摂取することが効果的。発作時には、頭を温めると脳の血管が拡張するので、氷枕などでこめかみ部分を冷やすよう心がけてほしい。
予防薬には、塩酸ロメリジンが有効である。発作時の頓挫薬としては、セロトニン受容体に特異的に作用するスマトリプタンやゾルミトリプタンなどのトリプタン系薬物が発売されているが、これらは服用後に効果があらわれるまでに一~二時間かかることから、現在、速溶錠、点鼻薬の発売が予定されている。
さて、アメリカの南北戦争中、北軍最高司令官グラント将軍もこの片頭痛に悩まされた一人であったが、南軍のリー将軍からの降伏の書簡が届いた瞬間に頭痛から解放されたそうだ。グラント将軍のストレスたるや押して知るべしの一幕である。
(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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