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34 痛がりは誰だ!?[上]

新生児は大人の2倍敏感

「痛み」に対する感受性、抵抗力について考えてみたい。題して「痛がりは誰だ!?」

まず、年齢別にみるとどうだろう。一般的には、高齢の方よりも若年者の方が痛がりとの報告がある。この点に関して、六十五歳以上の高齢者は痛みに対する感受性が鈍くなることが知られている。といって、「じゃ六十五歳以上の患者さんには麻酔は必要ない」などと早合点する麻酔科医はまずいないのでご心配には及ばない。

なお、「新生児は痛みに対して鈍感で、どうせ覚えていないのだから手術の際の麻酔は必要ない」と考えられていた時期がある。恐ろしい話である。事実、私の恩師である故兵頭正義教授は「昭和三十年代初頭までは、新生児や生後二、三カ月までの乳児には麻酔をかけずに手術が行われていた。これは大きな間違いであり、生後六カ月くらいまではより痛みに過敏なのである」と話されていた。確かに新生児は「痛い」とは訴えない。しかし、最近の研究では、生後六カ月までは成人の二倍痛みに敏感であることが確認されている。

子供の頃に強い痛みを経験してその痛みを記憶してしまうと、成人してから痛がりになるとする研究報告がある。また、真偽の程は定かではないが、貧しい家庭に育った方は幼い頃に多くの痛みを経験しているので痛みに対する感受性が高く、成人してから痛がりになりやすく一方、裕福な家庭環境ではおっとりと育っているので、痛みに対する抵抗力が強くなるとする説もある。

男性と女性ではどうだろう。多くの研究では、女性の方が痛がりであるとの結果が出ている。例えば、私どものペインクリニックを受診される患者さんの男女比は一対二で、明らかに女性が多い。その理由ははっきりしないが、女性の方がデリケートで敏感であると分析してよいだろう。「痛みをより早く認知する方が神経系の機能が優れている」と仮定するならば、男性よりも女性の体の方が完成されているということになる。しかし、出産の際の激烈な痛みに耐えることが可能な女性を、「男性よりも痛がりだ」と決めつけるのはいかがなものか。

次回も引き続きこのテーマについて述べる。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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