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55 通年性アレルギー性鼻炎

室内塵やダニの吸入が原因

アレルギーの歴史は古い。古代エジプトの象形文字には、当時のメネス王が毒蜂に刺され、そのアレルギーによって死亡したとの記述が残っている。さらに古代バビロニアには、卵アレルギーの予防法と考えらえる記録がある。なお、一九〇六年、オーストリアの小児科医ピルケは、「異なった反応」を意味するアレルギーとの言葉を初めて用いた。

アレルギーとは、「体内に抗原となる物質が侵入すると、体はその抗原に対して特異的な抗体を産出し、再び同一物質が侵入した際に起こる防御反応」ではあるが、この反応が防御としてではなく、体に不利な状態を引き起こすのである。

さて、これらアレルギーの代表である。「アレルギー性鼻炎」は、好発する時期の有無によって季節性と通年性に分けられる。前回、紹介したスギ花粉症の方で、スギ花粉の飛散時期を過ぎてもいっこうに症状が収まらない場合には、「通年性アレルギー性鼻炎」の可能性を考えなくてはならない。

通年性アレルギー性鼻炎では、一年を通じて花粉症と同様にくしゃみ、鼻水、鼻づまりをみる。原因としては室内塵(ハウスダスト)やダニの吸入によるものが圧倒的に多いが、住宅の気密性が向上し、暖房事情が良くなったことがその要因である。その他、犬や猫の毛、昆虫類、カンジタやアスペルギルスといった真菌類によるものもある。

二〇〇二年度の統計によれば、わが国では五人に一人が本疾患を有しており、特に鹿児島、山形、福井県で多くみられたという。五~九歳で急増するが、成長につれて表面化するアレルギーの形を次々と変えるアレルギーマーチと呼ばれる現象を引き起こすことがある。乳児期の食物によるアトピー皮膚炎、幼児期のダニの吸入による喘息(ぜんそく)、そして学童期のアレルギー性鼻炎といった具合に、である。

予防法としては、部屋の窓を開け風通しを良くして、ダニフィルターのついた掃除機で丁寧な掃除を心がけること。布団はこまめに干して、クッションやぬいぐるみをベッドに持ち込まないことなどである。治療法は、季節性のものと同様に抗ヒスタミン薬、副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬や漢方薬の投与、減感作療法、鍼治療、鼻腔(びくう)内粘膜のレーザーや薬物(トリクロール酢酸)による焼灼(しょうしゃく)と枚挙にいとまがない。なお、私どもの施設では、星状神経節ブロックにより良好な効果を得ている。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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