ドクター森本の痛みクリニック

Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

66 関節リウマチ

全身の倦怠感や微熱、筋肉痛も

「あのね、川島のおばあさんがね、僂麻質斯(リウマチス)で肩が痛むでね、それで近頃は大層氣むづかしいのですと」。このように徳富蘆花の『不如帰』上篇五の四には、主人公浪子の姑が持病の僂麻質斯、つまりは「関節リウマチ」に苦しんでいる様子が描かれている。このくだりは、古くからリウマチを患っていた人がわが国でも多かったことを物語っている。

関節リウマチは、すべての人種、民族でみられ、欧米での発症率は全人口の約1~2%と報告されている。女性での発症率が男性の二~三倍高く、四十~六十歳代にピークを示す。

発症初期には手のこわばり(朝のこわばりとして知られている)をきたし、その後、慢性的な炎症によって関節が腫れあがる。手や足関節の障害が多く、肩や股などの大きい関節が障害を受けることは少ない。しかし、初期から大関節に障害がある場合には重症とされるので、浪子の姑は重症だったのであろう。眠れないほどの強い痛みを生じることは少なく、関節の持続的な鈍痛、運動時の痛みが主体となる。

炎症が進行し関節が破壊されると、手指ではスワンネック変形、ボタン穴変形、足ではワシ足変形といった特徴的な関節変形を生じる。

さらには、この関節リウマチは全身病であることから、関節の障害以外にも全身倦怠感、微熱、筋肉痛、後頭部や背中の皮下結節(リウマチ結節と呼ぶ)、心外膜炎などを伴うこともある。なお、妊娠により症状が軽快することがあると報告されているが、この事実が、今後の原因究明の糸口となるかもしれない。

治療は、半世紀前までは、非ステロイド性消炎鎮痛薬や副腎皮質ステロイド薬による痛みの軽減が主目的であった。しかし、その後、さまざまな薬物が疾患修飾抗リウマチ薬として開発され、これらのうちでメトトレキセート、サラゾスルファピリジン、レフルノミド、さらには抗サイトカイン療法のためのインフリキシマブなどは関節の破壊を抑制することが確認されている。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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