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77 パエリアを食べよう

サフランは血の滞り、不安の特効薬

今回は、医薬品としての「サフラン」の話である。そのエキゾチックな香りと鮮やかな黄金色で知られるサフランは、アヤメ科の多年草である。ヨーロッパ南部の地中海沿岸で栽培されているが、特にドン・キホーテの舞台にもなったスペインのラ・マンチャ産のものが上質とされており、サフランを用いた炊き込みご飯「パエリア」は有名である。サフランは晩秋に淡い紫色の花を開くが、その雌しべの先端にある濃紅色の柱頭を乾燥させたものが、広く用いられている。

サフランは紀元前から薬草、香味料、染料として用いられており、古代ローマ、ギリシャにおいても女性の眉(まゆ)染めやマニキュアとして重宝された。わが国へは、江戸時代にヨーロッパから伝えられ、明治時代には「サフラン湯」などの家庭薬に配合され、婦人用薬としても販売されていた。また、中国では蔵紅花と呼ばれ、産後や閉経後の血の滞りやいわゆる血の道症、不安の特効薬として使われているという。

薬理効果についての最近の研究結果からは、従来の月経困難症、月経不順、更年期障害、不安神経症、不眠症以外に、血液を固まりにくくし血管を拡張させることから心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞に対する予防的な使用が考えられている。

また、その成分であるクロシンが癌(がん)の発生を抑えること、飲酒時の記憶障害の予防、脳の神経伝達効率を向上させる効果のあることが確認されている。そのほかにも、糖尿病、高血圧症、慢性扁桃(へんとう)腺炎、前立腺肥大症に対する効果が報告されている。魔法の薬のごとくである。

私どもの施設においても、このサフランを処方する機会が増えている。他の漢方薬とともに日に0.3~1グラムを服用する。100~150ミリリットルの熱湯を注いで飲んでもよい。ただし、非常に強い子宮収縮作用を有するので、妊娠中の方は用いるべきではない。

子供さんをしかるのに疲れてイライラがたまっているお母さん方、今日の晩ご飯にはサフランをたっぷり使ったパエリアを用意されてはいかがでしょうか。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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