ドクター森本の痛みクリニック

Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

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カフェインで軽快する一方で…

カフェインをとると、眠気や疲労感が減り、集中力や思考力が増す。私も大学受験を控えた時期には、このカフェインを含む栄養ドリンク剤をガブ飲みして机に向かったものである。カフェインはコーヒーや緑茶、コーラ、ココア、ドリンク剤のみならず、市販の解熱鎮痛薬、風邪薬、鼻炎薬、乗り物酔いの予防薬などにも含まれており、現代人は、知らないうちに大量のカフェインを摂取している。
 カフェインは、二日酔いによる頭痛を軽減することが知られており、さらに片頭痛や群発頭痛などの血管性頭痛の治療にも用いられている。カフェインが直接的に脳血管を収縮させること、血管性頭痛の治療であるエルゴタミンの吸収を促進し、効果を増強することによると考えられる。事実、十七世紀に書かれたスイスの神経学の教科書には、コーヒーが片頭痛の治療薬として紹介されている。
 しかし、カフェインは頭痛を軽減する一方で、カフェイン禁断性頭痛と呼ばれる頭痛を引き起こす。コーヒー(一杯あたりのカフェイン含有量は百から百八十ミリグラム)を多飲する人(カフェインを日に五百ミリグラム以上、月に十五グラム以上摂取)では、カフェインの摂取中止によって頭痛を生じる。これは反銚現象(リバウンド)としての脳血管の拡張が原因である。最後にコーヒーを飲んでから二十四時間以内に発生するが、百ミリグラムのカフェインを摂取することで軽快する。従って、無意識のうちにカフェインに依存してしまうのだ。ストレス解消のためのコーヒーガブ飲みはいけない。
 なお、最近では、コーラの飲み過ぎによって、子供がこのカフェイン禁断性頭痛を発したとする報告がある。カフェインレスのコーラなども市販されているので、子供さんがコーラを欲しがった場合、カフェインレスのものを選んであげることが望ましい。
 閉話休題。「つばきは万病の薬」との諺がある。科学的には、唾液に含まれるロダン塩やリゾチームは、ある種の細菌をやっつける。しかし、唾液には他の細菌の活動を促進する物質も含まれているのだ。血管性頭痛に悩む方にとって、カフェインは唾液と同じく諸刃の刃である。正しい認識が正しい予防に繋がることをお忘れなきよう。
(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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