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13 帯状疱疹(たいじょうほうしん)

誰にもウイルスが潜んでいる

高齢化に伴い、帯状疱疹(ほうしん、ヘルペス)の発生が増加している。この帯状疱疹は、小児期に感染した水痘(水ぼうそう)のウイルスが、神経節において再活性化し、増殖することで起こる。増殖したウイルスは末梢(しょう)神経を傷つけながら進み、神経に沿って皮膚に達する。従って、他人から感染したものではない。なお、ヘルペスの呼称はギリシャ語のherpein、つまり「這(は)う」に由来している。

特に二十代と五十歳以降によく発生する。体中のどこにでも起こるが、肋間神経(胸背部)や三叉(さんさ)神経第一枝(前額部)に多く、99%以上が片側性である。

通常は、ピリピリとした痛みに引き続いて、三~四日後に帯状の水疱が出現する。筆者の経験では、痛みの原因が分からないままに湿布を貼り、水疱を湿布かぶれだと自己診断するため、発見が遅れることが多い。三~四週間で水疱はかさぶたとなって治癒するが、その後、性質の異なる激烈な痛みを生じることがある。これが帯状疱疹後神経痛である。

帯状疱疹の治癒のポイントは、いかにして神経痛の発生を予防するかにある。ペインクリニックでは、これに対して種々の神経ブロック療法を行っている。障害を受けた神経の根部に局所麻酔薬を注入して、痛みの伝達を遮断するのである。また、アシクロビル、塩酸バラシクロビル、ビダラビンなどの抗ウイルス薬の投与が広く行われているが、いずれも発症後五日以内に投与を開始しないと神経痛の予防には結びつかない。

米国では、帯状疱疹の予防のために、高齢者への水痘ワクチンの接種が試みられている。ワクチンの効果は六年以内で、その間に帯状疱疹は発症するものの極めて軽症であったとされている。しかし、残念ながら臨床での使用には至っていない。

帯状疱疹を皮膚だけの病気だと思わないことである。病気の本態は神経の異常なのだ。帯状疱疹は水痘に罹った人であれば、誰にでも起こりうるのである。あなたの体内にも水痘ウイルスは潜んでいる。もし、帯状の水疱をみたら、早い段階でペインクリニックを試してほしい。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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