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Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

44 ペインクリニックって何

痛みとその人を診る施設

頭痛、歯痛、腰痛など様々な痛みを訴えて、多くの患者さんが病院を訪れる。しかし、患者さんからは「どの科目を受診すれば良いのか分からなかった」との声を聞く。病院の総合受付に問い合わせると、臓器別医療の弊害からか「眼の奥の痛み?眼科でしょう」「舌の痛み?耳鼻咽喉科ですね」と事務的に振り分けられてしまうことが多い。

この「どの科目を受診すれば良いのか」状態を引き起こしている原因のひとつとして、医療関係者の痛みに対する認識の低さが挙げられる。医師もそうである。医学部での授業、さらには卒後の臓器別医療によって、痛みは病気の一症状に過ぎないとの教育を受けたことがこの弊害を生んでいるのだ。現代の医学は病気の診断、治療に重きを置いて、患者さんを診ることをおろそかにしているとは言えないだろうか。患者さんが中心であるとの医学の原点に立ち戻って、患者さんを苦しめている痛みを取り去ることに全力を尽くすことが、医療に従事するものの責務である。原因が特定できていなくても、痛みがある場合には、まずは痛みを軽減することが重要なのだ。

新薬が次々と開発され、医学は目覚ましい進歩を遂げている。むろん痛みに関する医学も格段の進歩を遂げてはいるが、医療の現場では、隅に追いやられてエアポケットのなかにあるとの印象が否めない。また、薬だけでは太刀打ちできない痛みもたくさん存在する。それらの痛みを含めて、病気だけではなく患者さんをトータルに診る医学が「ペインクリニック」である。私は「ペインクリニックって何ですか」との問いには、「すべての痛みとその人を診る施設です」と答えている。過去、現在を問わずに、医学のなかで痛みが占める割合は大きいはずである。医学の歴史は痛みへの挑戦であったとしても過言ではないだろう。

『人は痛みからどう解放されるか』(ベネッセ刊)の著者、保坂正康氏は、「激しい痛みは、心理的に人間の尊厳を傷つけるばかりではありません。それを放置することは自らの肉体に対して非礼です。取れる痛みは、我慢などせずに積極的に取って下さい」と述べている。不必要な痛みに苦しめられないためにも、本紙面において、改めて「痛み」について考えてみませんか。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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