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70 RSDとカウザルギー

原因はさまざま 神経の“誤作動”

米国の南北戦争当時、フィラデルフィア陸軍病院での診療に従事していたミッチェルは、奇妙な痛みの存在に気付いた。銃弾で末梢神経に損傷を受けた兵士数名が、傷が治った後にも、ひどい痛みを訴え続けたのである。一八六三年、ミッチェルはこの痛みをcausalgia(カウザルギー)と名付けた。ギリシャ語のkausis(熱)とalgos(痛み)からの造語で、「熱く灼(や)けるような痛み」を意味する。

その後、末梢神経に直接的な損傷がなくても同様の病態が発生することが確認され、エバンスはこれらをreflex sympathetic dystropy(反射性交感神経性ジストロフィー、通称RSD)と名付けた。なお、一九九四年、国際疼痛学会は、RSDは「CRPS typeⅠ」、カウザルギーは「CRPS typeⅡ」との呼称を用いることを提唱している。

さてRSDとカウザルギーは、何らかの刺激に反応して交感神経が興奮した結果、発症する。原因は、骨折やねんざ、打撲などの外傷、注射や関節鏡、手術、抜歯などの医原性のもの、脳血管障害、帯状疱疹(ほうしん)などさまざまなものが考えられる。それらによって損傷を受けた神経が脳に誤ったシグナルを送り続けることで、さまざまな情報に混乱を生じるのである。極めて軽度の外傷後に発症することもあり、現在、米国では百五十万人~六百万人の方がこの痛みに苦しんでいるとのデータがある。

発症後の時期によって症状は異なるが、灼けるような痛みに加えてアロディニア(通常は痛みとは感じない刺激で痛みが生じる状態)、痛覚過敏、皮膚温の変化、浮腫、骨や皮膚、爪の萎縮、発毛の変化、関節の拘縮と多彩である。痛みは徐々に広がり、反対側の四肢に及ぶ(鏡像現象と呼ぶ)こともある。

治療は星状神経節ブロック、胸部・腰部交感神経節ブロックなどによる交感神経の遮断が中心となる。さらには、他のニューロパシックペインと同様に、三環系抗うつ薬、抗痙攣(けいれん)薬、静脈麻酔薬のケタミンや鎮(ちん)咳(がい)薬のデキストロメトルファンの投与も有効である。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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