ドクター森本の痛みクリニック

Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

84 腱鞘炎

患部の安静第一、アイシングが有効

筋肉の両端はひも状の腱(けん)となって骨に付着しているが、この腱を包んでいる鞘(さや)が腱(けん)鞘(しょう)である。刀の鞘を想像していただくとよい。腱鞘は腱が浮き上がらないように、かつ腱がスムーズに動くように機能している。

この腱鞘の炎症が「腱鞘炎」であり、慢性のものは使いすぎによる「狭窄(きょうさく)性腱鞘炎」が多い。例えば、コンピューターのキーボードをたたき続けるような機械的反復刺激を手に加えると、腱と腱鞘との摩擦によって炎症を生じるのである。

指の運動は、手のひら側にある屈筋群(指を曲げる)、手の甲側の伸筋群(指を伸ばす)によって行われている。この屈筋群の炎症の代表が「弾発指」(ばね指)、伸筋群では「ド・ケルヴァン病」である。

弾発指は、日常的に手をよく使う五十歳代の女性の親指・中指・薬指(利き手側)に多く見られ、早期には痛みを伴う。指を伸ばそうとしたときに、カクッとした感覚とともに、弾かれたようにまっすぐになるばね仕掛けのような動き(弾発現象)が特徴的である。これは腫れた腱が腱鞘に引っ掛かることで生じる。また、指の付け根に腫瘤を触れることがあり、進行すると指が曲がったまま伸びなくなる。

患者さんの中には、「洗濯物を貯め込んじゃって、アイロン掛けをまとめてしちゃったんです」と言う方もおられる。なるべくアイロン掛けはこまめに、が教訓である。

一方、ド・ケルヴァン病は妊娠中や産後の女性や、スポーツマンなどによく見られる。手首の親指側にある腱鞘の中を二本並んで通る短母指伸筋腱(親指を伸ばす働きをする)と長母指外転筋腱(親指を広げる働きをする)が狭窄することで発症する。痛み、腫れ、発赤を主症状として、物を握る、タオルを絞る動作で痛みが増強する。

腱鞘炎では、患部の安静が第一であり、アイシングも有効である。一般的には、消炎鎮痛薬の内服、局所麻酔薬と副腎皮質ステロイド薬の腱鞘内への注入が行われている。ペインクリニックでは、鍼治療やレーザー照射などを併用している。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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