ドクター森本の痛みクリニック

Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

83 こむらがえり

足の親指手前に引っ張る/温める

明け方に、ふくらはぎの痙攣(けいれん)と激しい痛みに襲われて飛び起きた。家人をたたき起こして、足の親指を引っ張ってもらい事なきを得た、との経験をお持ちの方も少なくはないだろう。で、今回のテーマはこの「こむらがえり」である。

『日本語大辞典』(講談社)によれば、「こむら(腓)とはふくはらぎ、こぶら」とあることから、「こぶらがえり」も正しい。地方によっては、「くそぶくろ」と呼ぶことがあるようだが、「くそぶくろがえり」とはならない。

こむらがえりは、ふくらはぎの筋肉が急に縮むことで発生する。いわゆる「つり」である。ゴルフやテニス、水泳などの運動中に起こることが多いが、明け方に寝床のなかで伸びをした途端に、激痛に襲われることもある。その他では、妊娠後期、血液透析中などにも多くみられる。また、糖尿病、肝硬変、下肢の静脈瘤(りゅう)といった病気と関連することもある。ともあれ、一度起こってしまうと癖になって繰り返すので厄介だ。

その原因は、筋肉の疲労、運動不足、脱水や体液中の電解質の異常(マグネシウム、カルシウム欠乏)などが考えられている。なお、下肢の静脈瘤によるものでは、心臓に血液を送り返す静脈のポンプ機能低下が指摘されている。

治療にあたっては、漢方薬の芍薬甘(しゃくやくかん)草(ぞう)湯(とう)が第一選択である。即効性があり、ゴルフのプレーの最中であっても、服用により十分で効果が表れる。たちまち杖(つえ)が要らなくなることから、去(きょ)杖(じょう)湯(とう)とも呼ばれる。

寝床のなかであれば、膝を伸ばして足の親指を手前に引っ張ること、である。加えて、蒸しタオルで温めることも有用である。

私どもの施設では、腓腹筋やヒラメ筋(ふくらはぎの筋肉)への低周波通電、あるいは同部にある“承筋(しょうきん)”“承山(しょうざん)”といったツボへの鍼治療を行っている。

関連する病気として、九~十五歳の若年者に発症し、全身の筋肉の痙攣、脱毛、下痢などを認める「全身こむらがえり病」(別名、里吉病)がある。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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