ドクター森本の痛みクリニック

Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

93 紅参の効用

体内のバランス維持機能高める

人参(にんじん)というと煮物に欠かせない金時人参、サラダの西洋人参を思い浮かべる方が多いだろう。今回のテーマは、その人参ではなくて「紅参(こうじん)」という薬用の人参である。食卓にのぼる人参はセリ科の一年生植物であるが、薬用人参にはウコギ科の多年生植物である御種人参の根が用いられており、まったく別物と考えてよいだろう。この御種人参を皮がついたまま高温で蒸すと、アメ色に変わることから紅参と呼ばれる。

中国では、数千年前から、薬用人参が漢方薬の成分として広く用いられており、かの老子も「人参は生命の危急時の救急薬、益命長寿の強壮補血薬」として紹介している。わが国へは天平年間に、渤海国の使者からの献上物として持ち込まれた。その後、江戸時代に、徳川吉宗の命によって日光の御楽園で本格的な栽培が始まり、その種子が各藩に分け与えられたことから、御種人参と呼ばれている。別名の「朝鮮人参」「高麗人参」の方が通りはよいだろう。

紅参の薬理効果は、疲労回復、体力増強、血流の改善と動脈硬化の予防、精神安定作用などと多彩であるが、血液中のコレステロールや中性脂肪を低下、善玉のHDLコレステロールを上昇させることも知られている。これらの作用は、人参の表皮に含まれるサポニンによる。さらには、がん細胞の増殖力を抑えるとの報告もある。

現在、医療用として処方される紅参は粉末の「コウジン末」であり、他の漢方薬に加える形で用いられている。例えば、風邪をひきやすくて疲れがたまり、食欲不振を訴える方には、補中(ほちゅう)益(えっ)気(き)湯(とう)にコウジン末を追加する。また、更年期の女性で、冷え症がありイライラが続いているとされる場合には加味(かみ)逍遥散(しょうようさん)に加えて、といった具合である。

漢方薬は、体のバランスの乱れを正常に戻すことを目的として用いられることが多いが、その中でもコウジン末は、ホメオスタシス(恒常性維持機能)を高める代表的な存在といえる。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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