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Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

92 スポーツ障害(下)

「野球肩」治療の原則は安静第一

スポーツ大好き人間が増殖している。でも、何事もやり過ぎてはいけません。「健全なる精神は健全なる身体に宿る」ではあるが、孔子曰く「過ぎたるは及ばざるがごとし」でもある。また、林髞(たかし)氏はその著書『頭のよくなる本』で、「大脳生理学からみて、激しい運動は頭脳の働きを妨げている」としているのだ。

スポーツには痛みが付きものではあるが、今回はこれらの代表である「野球肩」を紹介する。

野球肩とは、主として投手が投球動作を繰り返すことで起こる肩関節の障害の総称である。肩の周囲には、皮膚のすぐ下にあるアウターマッスル(三角筋、大胸筋、広背筋など)と、さらに奥側にあって肩を安定させているインナーマッスル(棘(きょく)上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)とがあるが、これらのアンバランスが大きな原因となる。

初期症状は投げ始めに起こる痛みであるが、体が温まるにつれて痛みが徐々に引いていくために、ごまかしながら肩を使い続けてしまうのである。しかし、運動を続けると骨膜炎や腱板断裂を引き起こしてしまうので無理はできない。

特に振りかぶったときに肩関節の後方に痛みが走り、加速からフォロースルーまでの時間に肩関節の外後方~上腕外側にかけて痛みを生じる場合は骨棘形成(ベネット病変と呼ばれる)が疑われる。

また、ボールをリリースする前後に痛みを感じる場合には、上腕二頭筋の腱が関節に付く部位(関節唇)が損傷されている可能性がある。なお、これらの病変はバレーボールでのスパイク、テニスでのサーブを繰り返すことでも発生する。

小学高学年に見られるものを「リトルリーグショルダー」と呼ぶが、この場合には上腕骨の成長していない骨(骨端線)の障害が多い。したがってリトルリーグでは試合回数を六回までに制限したり、連投を禁止しているのだ。

治療の原則は安静第一であるが、ペインクリニックでは、トリガーポイント注射や肩関節内への薬液注入により対処している。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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