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16 腰椎椎間板ヘルニア

むくみを取ると大幅に改善

四十歳をこえた中年以上の方の腰痛の原因として最も多いのが「腰椎椎間板ヘルニア」である。椎間板は、背骨を構成する骨の間に存在し、クッションの役目を担っている。椎間板は水分含量の高い髄核(ゼラチンのようなもの)とそれを取り囲む線維輪(軟骨の一種)から成り立っているが、年齢を経るに連れて髄核の水分量が減少し、線維輪にも亀裂が生じるようになる。この髄核が膨隆したり、線維輪の裂け目から突出(または脱出)した状態が「ヘルニア」である。

膨隆、突出した髄核は、その近くを走る神経根を圧迫して腰痛、坐骨神経痛やシビレを起こす。腰椎椎間板ヘルニアの95%は第四、第五腰椎、ないしは第五腰椎と仙椎間で起こる。前者では痛みに加えて下腿の外側から足背にかけてのシビレを生じ、かかと立ちが困難となる。後者では下腿後面から足の外側にかけてのシビレを生じ、つま先立ちを障害する。なお、頻度は低いものの、第一と第二腰椎間、第二と第三腰椎間でのヘルニアは症状が激しく、自力での排尿、排便が困難となることが多い。

治療の原則は安静であるが、痛みにはヘルニアによる物理的圧迫だけではなく、周囲組織の炎症による「むくみ」が大きく関与する。従って、むくみを取り去ることで症状は劇的に改善する。ペインクリニックで多用する腰部硬膜外ブロックこそが、このむくみの改善に威力を発揮するのだ。

四~六週間の持続牽引と腰部硬膜外ブロックの併用によっても症状が軽快しない場合、膀胱直腸障害を認める場合、痛み発作を繰り返すときには、MRIなどで手術適応を考えるべきであろう。

私ども麻酔科の中にも、この椎間板ヘルニアに苦しんでいる医局員は多い。S先生は、カワサキZZR1100なるバイクを駆って、「松山道でぶっ飛ばした」とうそぶいているが、こりゃ阿呆である。バイクの前傾姿勢はいけない。ヘルニアをより後方に押し出すようなものである。読者のなかにもヘルニアを抱えながらも「バイクが好きで好きで」といったご仁がおられると思うが、いけません。まずヘルニアをきっちり治してからツーリングに出ていただきたい。
(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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