ドクター森本の痛みクリニック

Dr. Morimoto’s pain clinic ドクター森本の痛みクリニック

41 頚肩上肢痛

安易なマッサージは要注意

後頚部~肩~上肢の痛みや手指のシビレを来す疾患群が「頚肩(けいけん)上肢痛」である。その病因は寝違いによる急性の痛みから癌による激痛まで多岐にわたるが、主として加齢変化による頚部変形性脊椎(せきつい)症、頚部椎間板ヘルニア、後縦靭帯(じんたい)骨化症など頚椎の構成要素の異常によって発症する。これらは「脊髄症」と「神経根症」に大別されるが、脊髄症は骨棘(こっきょく)や椎間板の後方突出などの物理的圧迫による脊髄自体の障害であり、一方、神経根症は神経が骨の間から出る部位での圧迫により生じる。

診断にあたっては、神経学的検査、レントゲンやCT、MRIなどの画像診断を用いて異常部位とその程度を検索することが肝要である。ペインクリニックでは、トリガーポイント注射、頚神経叢(そう)ブロック、星状神経ブロックなどの神経ブロック療法を行い、良い治療効果を得ている。これらの治療で軽快しない場合には頚部硬膜外ブロックである。外来で局所麻酔薬と少量のステロイド薬を注入する一回法と、入院してカテーテルを留置する持続法とがある。例えば、椎間板ヘルニアでは、脱出した髄核(椎間板の芯のようなもの)によって圧迫を受けている部位にむくみが起こって症状をさらに強くしていることがあり、硬膜外ブロックがこのむくみを消退させるのである。

なお、「神経ブロック療法は痛いだろうからまずはカイロプラクティックやマッサージで様子をみよう」と考えている方も少なくないだろう。これらの治療法で肩~肩甲骨内側の筋肉の緊張はほぐれるが、原因を取り除くことにはならない。特に椎間板ヘルニアなどでは要注意である。極端な外力を受けることによって取り返しのつかない状態を招くことがあるからだ。

かく言う私も頚部椎間板ヘルニアを患っている。先日も後頚部~上肢の痛みが増悪し、頚部硬膜外ブロックを受けた。通常は強い肩凝りを感じているだけだが、ひどくなると上を向くこともできないし、くしゃみをするだけで激痛が走る。椎間板ヘルニアの患者さんには、同病相あわれむで「お互い頑張りましょう」と手を握りたくなってしまう。しかし、むやみに手を引っ張ると痛みを誘発してしまうので始末が悪い。

(森本昌宏=近畿大麻酔科講師・祐斎堂森本クリニック医師)

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